遺産分割を円滑に進めるための民法相続法改正
更新日時:10月2日
Contents
民法の共有(共同所有)に関して、共有制度が変わります
1 共有物の管理(民法252条)
- 旧法
共有物の変更(宅地造成)は全員の同意が必要
管理(使用・賃貸)は持分の過半数の同意が必要
保存(共有物の修繕)単独で可
- 改正法
共有物の変更(宅地造成)は全員の持分の過半数の同意で足りる。
管理(使用・賃貸)持分の過半数の同意が必要
保存(共有物の修繕)単独で可
と改正され、持分の過半数で変更が可能となり共有物の円滑な利用管理が可能となりました。
2 共有物分割(民法258条)
- 最高裁判所の判決で認められた全面価格賠償の分割方法について民法に規定がもうけられました(民法258条)。
他の共有者の持分を強制的に買い取ることができます。
- 通常の共有となっている不動産について相続が発生し一部が遺産共有となった場合、相続開始後10年経過すれば、共有物分割訴訟で全部分割できることになりました(民法258条の2)。
旧法では、遺産共有を解消するため、まず遺産分割が必要でその後に通常共有解消のため共有物分割訴訟の2つの手続が必要でした。
- 共有者に行方不明の人がいる場合(民法262条の2)
裁判所に申立することで、不明者の持分相当額の供託を条件に持分の取得を認める決定してもらい法務局に供託することで行方不明者の持分を取得することができるようなりました。
遺留分に関して、制度が変わります
兄弟姉妹以外の相続人が遺言により、法定相続分の半分(直系尊属は3分の1)以下しか相続できなくなった場合に、遺言の一部を取り消すことができる権利です。
子2人が相続人の場合、子の1人に唯一の遺産である自宅を相続させる遺言状を書いた場合、これまでは遺留分侵害額請求権を行使すると自宅は、4分3と4分の1の共有となりました。そうなると一方の同意がないと自宅を売却することもできなくなります。
今回の改正で、遺留分権利者は自宅の時価の4分の1相当額の支払いを受ける権利をもつこととなり、裁判所は、相手方の申立により、支払について期限をもうけたり、分割の支払を受ける権利に変更することが可能となりました。
遺留分は金銭的請求権となりました。(1042条1項1046条1項)
裁判所は、支払について分割払としたり、期限を与えることができます。(1047条)
減殺請求の対象となる贈与は、改正前は制限がありませんでしたが、被相続人死亡前10年までものに限られることとなりました(1042条3項)。
但し、遺留分を侵害することを知ってなされた贈与は遺留分侵害額請求の対象となります(1042条1項、3項)。
遺産分割前の預貯金債権が引き出せるようになります
令和元年7月1日から始まります。
遺産分割前の預貯金債権が単独で引き出せることなりました。
預金者が亡くなったことを銀行が知ると預金を凍結してしまい引き出せなくなります。預金者以外の人が通帳や印鑑やカードを悪用して引き出すことを防ぐためです。
相続人が預金を引き出す場合、共同相続の場合は、他の共同相続人の同意が必要です。
対策として、
1 死亡前に葬儀費用等にあてるため、カードで50万円ずつ出金しておく。
2 銀行には死亡を知らせず、カードで出金する。
3 葬儀費用の支払についてのみ他の相続人に同意の判をもらって引き出し支払う。
といった方法がとられてきました。
しかし、事故で急に亡くなった場合は1の方法はとれませんし、他の相続人が銀行に死亡を通知してしまった場合は、2の方法はとれませんし、他の相続人との関係がよくなく3の方法もとれない場合は、葬儀費用を喪主が立て替えなければなりません。
改正相続法(民法第909条の2)では、遺産である預貯金の額の3分の1に法定相続分をかけた額で、150万円まで引き出せることとなりました。
そうすると亡くなった方が
A銀行 1000万円
ゆうちょ 500万円
B信用金庫 100万円
の預貯金があり、相続人が長男、長女であった場合
A銀行 1000万円÷3÷2= 166万円なので150万円
ゆうちょ 500万円÷3÷2=83万円
B信用金庫 100万円÷3÷2=16万円
まで引き出せることとなり合計249万円ほどを引き出しお葬式がだせることになります。
この規定は、改正相続法施行前に被相続人が亡くなった相続についても、適用されますので、大変便利な制度となっています。
これで足りない場合は、家庭裁判所に申立して仮払の申立をして認めてもらうことになります(家事事件手続法200条)。
相続法改正トピック
① 自筆証書遺言の財産目録について
② 遺留分に関して、制度が変わります
③ 配偶者への居住用建物の贈与
④ 特別の寄与料の請求権
⑤ 遺産分割前の預貯金の取り扱い
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