前妻の子にも相続権があると聞いたのですが、詳しく教えてください。
前妻の子にも相続権があります。子は常に相続人となります。前妻が子の親権をもっている場合でも、前妻が結婚前に氏に戻り、子も前妻の氏に変更している場合も同様です。前妻の子が、誰かの養子となっている場合(前妻の再婚相手の養子となっている場合)でも同様です。
それでは、前妻の子が2人、後妻の子が2人いる場合、誰が相続人となるかみていきましょう。
・まず前妻の子2人と後妻の子2人は相続人となります。
・前妻は、離婚しているので相続人となりません。
・後妻は、相続人となります。
・法定相続分は、前妻の子、後妻の子は、各8分の1となり、後妻は2分の1となります。
なお、前妻の子は、遺留分がありますので、法定相続分の半分16分の1までは遺言で相続分を修正することができます。
この場合、遺留分対策に有効な方法は、養子縁組と生命保険です。具体的には身内の人と養子縁組して子を増やして遺留分を減少させます。また、一時払の生命保険に加入し、受取人を財産をのこしたい子や妻にしておけば生命保険金は遺産でないので、遺留分計算の際に特別受益として原則として算入されません(相続税の計算の際には算入されます。)。
もっとも遺産の大部分を生命保険料として支払ってしまったような場合は、特別受益として遺産に算入することになります。
Contents
前妻の子がいる場合の相続手続き
遺産分割協議
前妻の子も法定相続人となりますので、被相続人の相続財産を承継するためには、前妻の子も交えて遺産分割協議を行う必要があります。
生前、前妻の子との交流がほとんどなく、音信不通で連絡先もわからないという状態であれば、遺産分割協議がなかなか進まない可能性が高いといえます。
遺言書で相続の対策
遺産分割が難しそうであれば、遺言書での相続対策を考えたほうがよいでしょう。
遺言で遺産分割の方法を指定しておけば、前妻の子を含めた相続人全員で集まって遺産分割の話し合いを行わないでも、遺産の相続手続きを進めることができます。
前妻の子は遺留分がある
遺言書で財産の帰属を指定したとしても、前妻の子には、遺留分の権利があります。
たとえば、すべての財産を再婚後の妻やその子に相続させるという内容の遺言書を書いたとしても、前妻の子が遺留分額侵害請求を行使して、遺留分額に相当するお金を請求する可能性があります。
そのため、遺留分の侵害請求をされても対応できる状態にしておくか、あらかじめ遺留分を考慮した遺言書を作成するという方法もよいでしょう。
また、前妻の子に贈与などの特別受益がある場合は、遺言書の付言事項に記載して証拠としておくことが有効です。
生命保険での対策
相続対策としては、遺言書のほかに、生前に生命保険に加入し、受取人をしておくのがよいです。
生命保険金は、相続税申告の際には遺産として申告しなければなりませんが、最高裁判所は原則として遺留分計算の際に遺産とはならないが、保険金を入れないことによって、見過ごすことのできない不公平が生ずる場合は、遺産に算入するとしていますので、遺産と生命保険金の合計額の4割までにしておくのが安心です。
養子縁組での対応
遺留分計算の際の相続人の数を増やせば遺留分も減ります。そこで、後妻の子の配偶者や子と養子縁組しておく方法があります。難点は、養親と養子は同じ氏となるので氏が変わることです。また配偶者との養子縁組は、将来離婚の際に離縁も必要となりますので注意が必要です。
相続させたくない人がいる場合は、早めに弁護士に相談するようお勧めします。
弁護士が対応してくれること
遺言書、家族信託契約書の作成
遺言書で相続させたくない人を除外して相続する公正証書遺言状を作成します。
その人に推定相続人排除の事由がある場合は、推定相続人の排除の公正証書遺言を作成して弁護士が遺言執行者になって推定相続人の排除の申立をします。実際には推定相続人の排除が認められる例は稀ですので、配偶者や養子の場合は離婚や離縁を検討します。
その人が遺留分のある相続人の場合(配偶者、子、親)は、遺留分に配慮した遺言にするか侵害する遺言にするか後日のトラブルも考えて決定します。
弁護士を遺言執行者とすることで、遺言が確実に執行されます。相続させたくない人があつかましい人の場合、他の相続人に圧力をかけ、遺言を無視して相続させたくない人に有利な遺産分割協議書を作成して相続することを防止することができます。
家族信託の場合も遺留分を侵害した場合、相続できなかった人から、遺留分侵害額請求を受ける可能性があることは、遺言と同じですが家族信託は撤回可能な遺言とちがって撤回不能の条項が入っていることが多く一旦契約すると撤回できないことがありますので家族信託契約をする場合は注意が必要です。
弁護士に依頼するメリット
自筆の場合は、遺言書が無効となることを防止できます。
遺留分の計算は生前贈与等の特別受益や不動産の時価を考慮する必要のある複雑なもので、裁判事案を経験した弁護士が得意とするものです。相続税にも配慮した遺言を作成し、相続税についての節税対策をすることができます。
弁護士に依頼して遺言等をすることにより、死後の紛争を防止することができます。弁護士を遺言執行者とすることで、遺言が確実に執行されます。相続させたくない人があつかましい人の場合、他の相続人に圧力をかけ、遺言を無視して相続させたくない人に有利な遺産分割協議書を作成して相続することを防止することができます。
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この記事の執筆者
弁護士 藤井義継
専門分野
相続・離婚など家事事件経歴
昭和63年に弁護士登録後、神戸市の事務所勤務を経て、平成4年に藤井義継法律事務所を開設。相続、離婚、不動産トラブルなど、家事・民事事件を多く取り扱う。 弁護士会の活動として、神戸地方裁判所鑑定委員や神戸地方法務局筆界調査委員を経験。平成16年には兵庫県弁護士会副会長も経験している。 弁護士歴30年以上、相続問題解決実績250件以上の豊富な実績があり、相続問題の早期解決を得意としている。 詳しい弁護士紹介はこちら>>- 相続放棄をしても生命保険金は受け取れる?
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