寄与分が問題になる場合

寄与分とは、相続人の中で、被相続人の財産形成または維持に特別の寄与をした者に、法定相続分以上の財産を取得させ、実質的な公平を図る制度です。

寄与分の例

寄与分の説明例えば、被相続人の遺産が1億円で、相続人が兄弟2人であり、兄が家業を手伝って、被相続人の財産形成に2000万円の寄与があった場合、

みなし遺産 = 遺産:1億円-2000万円(兄の寄与分) = 8000万円

兄の相続分:8000万円 × 1/2 + 2000万円 = 6000万円

弟の相続分:8000万円 × 1/2       =4000万円

となります。

寄与分が認められる場合の例

・被相続人である親の家業に従事して、財産を増やした

・被相続人である夫の事業に、妻が無償で従事していた

・親の介護をして介護費用の支出を抑えた

このような場合は、寄与分が認められる可能性がありますので、弁護士にご相談ください。

どのような場合に寄与分が認められるのかは微妙な判断ですので、納得が出来ない点やご不安な点がある場合、寄与分を巡って、他の相続人と揉めそうな場合は、弁護士にご相談ください。

以下は東京家庭裁判所の家事第5部の寄与分についての説明です。

民法第904条の2の1項は,「共同相続人中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし,第900条から第902条までの規定(法定相続分,代襲相続人の相続分,遺言による相続分の指定)により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする」と定めています。この特別の寄与を評価して算出した割合や金額のことを,寄与分といいます。

寄与分が認められるための要件

寄与分が認められるためには,当事者全員の合意が得られるか,おおむね次のような要件を満たすことが必要です。

① 特別の寄与であること

民法では,夫婦間の協力扶助義務(752 条),親族間の扶助義務(877条1項)及び相互扶助義務(730条)が定められています。

相続に際しては,これらの義務があることを前提として法定相続分が決められています。したがいまして,労務の提供や療養看護等のすべてについて寄与分が認められるわけではなく,寄与分が認められるには,夫婦・親族間の扶助として多くの人が通常行うと期待される程度を超える特別の労務の提供や療養看護等(寄与)を行ったことが必要です。単に,他の相続人と比較して,かかわりの程度が大きかったということだけでは,特別の寄与があったとはいえません。

例えば,被相続人と同居していた,頻繁に被相続人宅を訪ねていた,月々小遣いをあげたり物を買ってあげたりした,旅行に連れて行った,入院中他の相続人よりも頻繁に見舞いに行ったなどの孝行では,特別の寄与があったとはいえません。

② 相続開始前までの行為であること

被相続人が亡くなった後の行為,例えば,遺産不動産の維持管理,遺産整理,法要の実施などは,寄与分の対象になりません。

③ 対価を受けていないこと(無償性)

無償又はこれに近い状態で寄与がなされていることが必要です。現金で給料や報酬をもらっていた場合だけではなく,被相続人に生活費を負担してもらっていたり,被相続人の家屋や土地を無償使用している場合は,寄与分に該当しないことがあります。

④ 被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること

特別の寄与によって,被相続人の財産が減少することをくい止めたり,増加をさせたりというような財産上の効果が具体的に現れたことが必要です。

精神的な支えになったなど,財産上の効果と直接結びつかないようなことは,因果関係があるとはいえません。

⑤ 客観的な資料等で証明できること

寄与分の主張をする相続人は,誰が見ても,もっともだと分かるような裏付け資料(「証拠」,「書証」といいます。)を提出し,特別の寄与があることを自ら立証しなければなりません。

寄与分の主張をする前に

寄与分が認められるということは,法定相続分や指定相続分を修正することになりますので,修正をするに足る事情が必要であることを十分にご理解ください。

寄与分を主張する場合には,まずはご自身で,上記の①から⑤までの要件に当てはまっているかを十分に検討した上,別添の「寄与分主張のポイント」を参照して,必要な裏付け資料を用意してください。裏付け資料のないまま寄与分の主張をしますと,調停や審判手続をいたずらに紛糾させ解決を長引かせてしまうだけです。

家庭裁判所では,相続人の方から寄与分の主張がありますと,他の相続人の意向をうかがうとともに,上述した①から⑤について,厳密に認定しますので,慎重な検討をお願いします。

なお,寄与分については,遺産の範囲と評価が定まってからお聴きすることになっていますので,まず範囲と評価を確定させ,その後に主張をしてください。

かーくん

別紙②─2

寄与分主張のポイント

寄与分を主張する場合は,次に例示した主張のポイントを参考に,寄与分主張整理表などに記載して提出し,裏付けになる資料を添付してください。ご提出いただく文書や資料は,他の当事者用の写し(人数分)もご用意ください。

例1:被相続人と長年同居し,介護をしてきた場合

※どうして同居することになったのか,その経緯を説明してください。

※ 介護をした時期を特定してください(介護を始めた時期は,同居を始めた日や要介護認定を受けた日,退院した日などで,具体的に示す必要があります。)。

※上記の時期毎に,具体的にどんな介護をしたのかを示してください。

※被相続人から対価(何らかの利益)を得ていないかどうかを明らかにする必要があります。

★重要チェックポイント★

※ 高齢というだけでは介護が必要な状態だったとはいえません。疾病などで療養や介護を要する状態だったことが,療養看護の寄与分を主張する際の前提になります。

※同居やそれに伴う家事分担だけでは,特別の寄与とはいえません。

※ 仕事のかたわら通って介護した場合などは親族としての協力の範囲であって,特別の寄与とはいえず,介護に専念したといえることが必要です。

※入院・施設へ入所していた場合,その期間は原則として寄与分が認められません。

※ 寄与分の主張をする人(以下「寄与主張者」といいます。)が被相続人の収入や資産によって生活していたときは,寄与分が認められないことが多いです。

証拠資料の例

・被相続人の症状,要介護状況に関する資料

診断書,要介護認定通知書など

・療養看護の内容に関する資料

介護サービスのケアプラン,介護サービス利用票,施設利用料明細書(施設等に入所していた期間が分かる資料)など

・被相続人の当時の資産や収入を証する資料

年金等の収入の振込口座の通帳,介護サービス利用料の支払口座の通帳など

例2:長年,無給で事業を手伝ってきた場合

※どうして事業を手伝うようになったのか,その経緯を説明してください。

※具体的にどんな頻度で,どのくらいの時間,何をしたのかを明らかにしてください。

※被相続人と同居していたかどうか,同居していた場合は,生活費の分担はどうなっていたのかを明らかにしてください。

★重要チェックポイント★

※事業を手伝った結果として,被相続人の財産が増加した(または減少を防いだ)といえることが必要です。

※事業に専従していたことが必要です。別に週に1,2回手伝っていた場合などは,寄与分が認められないことが多いです。

※ 寄与主張者が被相続人の収入や資産によって生活していたときは,たとえ無給であっても寄与分が認められないことがあります。

証拠資料の例

・被相続人の確定申告書

・会社の場合,法人登記事項証明書,税務申告上の決算書,会計帳簿類(給与台帳など)など

・ 寄与主張者の被保険者記録照会回答書(厚生年金への加入歴の記録。職歴を疎明するため,社会保険事務所で発行してもらう。),確定申告書,給与明細書,給与振込口座の通帳など

例3:被相続人に対して財産を給付した場合

※どういう事情で財産を給付したかを説明してください。

※財産が寄与主張者から被相続人へ実際に動いたことを裏付ける資料が必要です。

※被相続人の代わりに債務を返済した場合には,実際のお金の流れ(寄与主張者がお金を出したこと)を裏付ける資料が必要です。

★重要チェックポイント★

※ 寄与主張者が被相続人を扶養したことにより被相続人が支出を免れたと主張する場合は,被相続人が扶養を必要とする状態にあり,かつ親族としての扶養義務を超えた特別の寄与だったといえなくてはなりません。

※あまり少額・短期間の場合は,寄与分が認められません。

証拠資料の例

・寄与主張者が金銭等を給付した事実に関する資料

寄与主張者の預金通帳,振込通知書(寄与主張者が被相続人に振り込んだ場合)

・被相続人が寄与主張者から金銭等を受領した事実に関する資料

被相続人の預金通帳,振込受領書,不動産売買契約書,増改築や入院費用等の明 細書,被相続人の家計簿等

・被相続人が要扶養状態にあったことを証する資料

相続人の非課税証明書,年金額改定通知書など

提出された証拠資料をもとに検討しますので,立証が不十分な場合には,寄与分の主張が認められないことになります。また,提出された主張整理表や証拠資料以外に,書面や資料の追完をお願いすることがありますことをあらかじめご了解ください。

寄与分が認められる範囲

寄与分は認められるのが法定相続人に限られます。

例えば、息子の妻が被相続人の介護に献身的に携わったというような場合には、残念ながら寄与分として主張することはできませんが、平成30年7月1日に被相続人が亡くなった場合は、改正民法により特別寄与の申立をして認められれば、相続人から金銭の支払を受けられる特別寄与の制度ができました。

 

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この記事の執筆者

弁護士 藤井義継

弁護士 藤井義継

専門分野

相続・離婚など家事事件

経歴

昭和63年に弁護士登録後、神戸市の事務所勤務を経て、平成4年に藤井義継法律事務所を開設。相続、離婚、不動産トラブルなど、家事・民事事件を多く取り扱う。 弁護士会の活動として、神戸地方裁判所鑑定委員や神戸地方法務局筆界調査委員を経験。平成16年には兵庫県弁護士会副会長も経験している。 弁護士歴30年以上、相続問題解決実績250件以上の豊富な実績があり、相続問題の早期解決を得意としている。 詳しい弁護士紹介はこちら>>